■ニニギの孫ウカヤフキアエズの陵墓とされた岩窟
平安初期の諸制度を集大成した『延喜式』のな
かに、朝廷が管理すべき山稜諸墓が記載されてい
る。「諸陵式」とよばれ、歴代天皇などの陵墓一
覧表といえるものだ。陵の名称、被葬者名、所在
地、面積、陵戸数などが記載されている。
そうした陵墓の筆頭に記されているのが、高天
原から降臨したニニギと、その子であるホホデミ、
ホホデミの子・ウカヤフキアエズの陵墓だ。神代
三代とよばれており、初代天皇の神武につながる
神々の陵墓とされている。神に墓があるのかとい
う疑問もあるのだが、高天原の神が地上に降りて
から現人神 がみ になるまでの三代と思えばいい。
今回の聖域は、吾平山上(あいらさんじょう)陵とよばれるウカヤ
フキアエズの陵墓とされるもので、『日本書紀』に
「西の洲の宮で崩御、日向の吾平山上陵に葬る」とあり、
「諸陵式」には、」日向吾平山上陵。彦波瀲武草葺不合尊 。
日向国に在り。陵戸無し」と書かれている。なんともむつかしい文字
が並んでいるが、これが正式な神名なのだろう。
(『磐座百選』より一部抜粋)
■稲魂さまを招くマンカイが行われるカミヒラセ
平瀬マンカイはアラセツの夕方、
ノロ役の神女たちが中心となって行われるもので、
同じように稲魂を招く祭事としてしられる。秋名
は小さな湾の奥にあり、湾の西側にマンカイを行う海岸がある。
ヒラセ(平瀬)とは平らな岩とい
う意で、10メートルほど離れてふたつのヒラセ
があり、カミヒラセ(神平瀬)、メラベヒラセ
(女童平瀬)とよばれている。
一畳半ほどのカミヒラセにはノロ役五人、三畳
ほどのメラベヒラセには男女の神人役七人がのぼ
り、交互にうたを歌い、東方を向いて、ネリヤの
稲魂様を手招くしぐさ(マンカイ)をくりかえす。
ノロ役が歌う「玉の石のぼて何の祝取りゆる西東の稲ガナシ
招き寄しろ」という最初の歌詞
にマンカイの主旨がこめられている。稲ガナシと
は「稲魂さま」という敬称で、玉の石(ヒラセ)
に上がって、西東の田袋やネリヤから稲魂さまを
招き寄せよう……と歌うのだ。
(『磐座百選』より一部抜粋)